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August 17, 2016

Column #1 メディカル ヴィレッジ 構想〜医療の協働体の時代に向けて〜

日本地域医療連携システム学会 理事長

日本メディカル ヴィレッジ 学会 理事長

順天堂大学医学部 病理・腫瘍学 教授

樋野興夫

今年、『日本地域医療連携システム学会』と『日本メディカル ヴィレッジ 学会』が設立された。『医療維新の事前の舵取り』となろう。『一人の人間を癒すには、一つの村が必要である=医療の協働体』の実践の歴史的な一歩でもある。「ユーモアに溢れ、心優しく、俯瞰的な大局観のある人物」の育成訓練の場でもある。

 

私の故郷は無医村であり、幼年期、熱を出しては母に背負われて、峠のトンネルを通って、隣の村の診療所に行った体験が、今でも脳裏に焼き付いている。私の生涯に強い印象を与えたひとつの言葉がある。「ボーイズ・ビー・アンビシャス」(boys be ambitious) である。札幌農学校を率いたウィリアム・クラークが、その地を去るに臨んで、馬上から学生に向かって叫んだと伝えられている言葉である。もちろん、当時の私は、クラークのことも札幌農学校のことも知らず、クラーク精神が新渡戸稲造(1862-1933)、内村鑑三(1861-1930)という後に、私の尊敬する2人を生んだことも知らぬまま、ただ、小学校の卒業式で、来賓が言った言葉の響きに胸が染み入り、ぽっと希望が灯るような思いであったものである。これが私の原点であり、そして19歳の時から、自らの尊敬する人物を、静かに、学んできた。その人物とは、南原繁(1889-1974)であり、上記の新渡戸稲造・内村鑑三であり、また、矢内原忠雄(1893-1961)である。『教養ある人間とは、「自分のあらゆる行動に普遍性の烙印を押すこと」であり、「自己の特殊性を放棄して普遍的な原則に従って行為する人間」のことである。それは人間の直接的な衝動や熱情によって行動する代りに、つねに理論的な態度をとるように訓練されることである。』{南原繁著作集第3巻より}。「練られた品性と綽々たる余裕」は「教育の真髄」である。「責務を希望の後に廻さない、愛の生みたる不屈の気性」が「人生の扇の要」の如く甦る。「ビジョン」は人知・思いを超えて進展することを痛感する日々である。

 

人間は、自分では「希望のない状況」であると思ったとしても、「人生の方からは期待されている存在」であると実感する深い学びの時が与えられている。

すべての始まりは「人材」である。行動への意識の根源と原動力をもち、「はしるべき行程」と「見据える勇気」、そして世界の動向を見極めつつ、高らかに理念を語る「小国の大人物」出でよ!

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